スペイン語

スペイン語の 命令文 をマスターしよう~肯定命令と否定命令をそれぞれ解説

スペイン語の 命令文 は文の構造は英語とほぼ同じですが、動詞が主語によって変化するためかなり複雑です。しかし文法を一通り習得すれば、一番日本語から翻訳しやすいのも命令文です。
また否定命令は肯定命令とは異なる構造となっています。文法をしっかりマスターして命令文を使いこなしてみましょう。¡Vamos!

スペイン語文法( 命令文 )

目次

1.肯定命令文

1)肯定命令文の構造
2)英語との違い
3)再帰動詞の場合

2.否定命令文

1)否定命令の構造(肯定命令や英語との違い)
2)再帰動詞の場合

スペイン語の 命令文 の構造

1.肯定 命令文

肯定命令とは「~しなさい」や「~してください」のように、ある行為を人に対して指示・勧誘・命令する行為を表す文です。
英語でいえば、”Tell me why.” や “Please be careful.” ” Give it a try.” などです。
ではスペイン語で肯定の命令文はどういう風に表現するのでしょうか?以下で詳しく説明していきます。

1)肯定命令文の構造

スペイン語の一般的な文は「目的語+動詞」という形が多いですが、命令文においては英語と同様で「動詞+目的語」の順となり、目的語が必要な場合は目的語が動詞の後に来ます。
そして、スペイン語の命令文は目的語が代名詞の場合は動詞とくっついて一語となります。
例を挙げてみます。

Dime porqué. (Tell me why. 理由を言って)
Sigue a Andy. (Follow Andy. アンディに続きなさい)
Ponlo aquí. (Put it here. それをここに置きなさい)

目的語代名詞でかつ直接目的語と間接目的語がある場合は2つの目的語が動詞の後に来て、その動詞とくっついて一語となります。

また間接目的語が代名詞で直接目的語が代名詞ではない場合は間接目的語は動詞とくっついて一語となりますが、直接目的語はくっつきません。

Dímelo . (それを私に言って)
Mándenosla por favor. (それを私たちに送ってください)
Mándenos la carta por favor. (手紙を私たちに送ってください)

2)英語との違い

英語では命令文の動詞として原形を使用します。とても単純明快です。
しかしスペイン語では命令文で原形(不定詞)を使用しません。
主語によって動詞が変化します。
命令文の主語とは何でしょう?
英語では命令文に主語という考え方がありませんのでそのような疑問も無理はありません。
スペイン語の命令文における主語とは「命令する相手方」のことです。
主語による動詞の変化には一定のルールがあります。以下そのルールを紹介します。
(命令文以外のスペイン語と英語の違いは別のページでまとめています。こちらもご覧ください。)

【スペイン語命令文の主語による動詞の変化】
①主語が二人称単数の場合(君、~君、~ちゃん、お前、あんたなどに対して)

原則:直接法現在形の三人称単数形を使用
例外:不規則形

(原則の場合)
Trabaja aquí. (ここで働きなさい)
Come toda la comida. (料理を全部食べなさい)

(不規則形の場合)
Pon los libros sobre la mesa. (本を机の上に置きなさい)
Ten cuidado. (気をつけなさい)

※poner や tener のように基本動詞ほど不規則な変化をします。

②主語が三人称単数の場合(あなた、~さん、~様などに対して)

接続法現在形の三人称単数形を使用

(例文)
Trabaje aquí. (ここで働いてください)
Coma toda la comida. (料理を全部召し上がってください)
Ponga los libros sobre la mesa. (本を机の上に置いてください)
Tenga cuidado. (気をつけてください)

③主語が一人称複数の場合(自分を含む周囲と一緒に)

接続法現在形の一人称複数形を使用

(例文)
Trabajémonos aquí. (ここで働こう)
Comamos toda la comida. (料理は全部食べよう)
Pongamos los libros sobre la mesa. (本を机の上に置こう)
tengamos cuidado. (気をつけよう)

④主語が二人称複数の場合(スペインのみ)

不定詞の語尾の r を d (d は発音しない)に変える

※この形はスペインのみで使用します。ラテンアメリカは三人称複数形と同じです。

⑤主語が三人称複数の場合(自分を含まない周囲に呼びかける場合)

接続法現在形の三人称複数形を使用

(例文)
Trabajen aquí. (ここで働らいてください)
Coman toda la comida. (料理は全部食べてね)
Pongan los libros sobre la mesa. (机の上に本を置いてください)
Tengan cuidado. (気をつけてください)

以上主語によってスペインでは5パターン、ラテンアメリカでは4パターンの変化があります。複雑ですがパターンをしっかり覚えておきましょう。

なお命令形を含むスペイン語の動詞の活用パターン全体も確認しておいた方がいいでしょう。

3)再帰動詞の場合

前述の1)で解説したとおり、スペイン語の通常の文は目的語が動詞の前に来ますが、命令文においては動詞の後に来て、さらに動詞とくっついて一語となります。
再帰動詞における再帰目的語も同様で通常文では動詞の前に来ますが、命令文においては動詞の後に来て、動詞とくっついて一語となります。

Cásate conmigo. (僕と結婚して)
Entérense de la noticia. (そのニュースを知っておいてください)

2.否定 命令文

1)否定命令の構造 (肯定命令や英語との違い)

否定命令とは「~するな」や「~してはいけない」のように、ある行為の禁止を人に対して指示・命令・勧誘する行為を表す文です。
英語の否定命令は “Don’t play baseball here. ” や ” Don’t be ashemed of yourself. ” などのように動詞が一般動詞でも be動詞でも ” Don’t “を先頭につければ否定の命令文が出来上がります。
しかしスペイン語においては英語との違いが2点あります。
一つ目は肯定命令の場合と同様に主語によって動詞が変化することです。
二つ目は文の先頭に 否定語の” No “が来ることです。英語では “Do + not ” で ” Don’t ” が先頭に来ますが、スペイン語ではいきなり否定語の ” No ” が来ます(” Nunca ” や ” tampoco “などのもあります)。

さらに肯定命令との違いも2点あります。
一つ目は目的語が代名詞の場合、通常文と同様に動詞の前に来ることです。
肯定命令では目的語は動詞の後に続き、動詞とくっついて一語になると解説しましたが、否定命令では通常文と同じように目的語を動詞の前に置きます。
二つ目は主語が二人称の場合の動詞の活用パターンが変わることです。

例文をいくつか挙げていきます。
①No la coman.
②No vayas a Tokio.
③No me lo mandes.
④No me mandes el video.

①は「それを食べないでください」という意味を複数の人に呼びかけている場面です。
先頭に否定語の “No” 、目的語 “la” は動詞の前に、動詞 “comer” は接続法現在形三人称複数形としています。
もし動詞を接続法ではなく直接法とすると “No la comen.” となりますが、この場合は「彼ら(あなたたち)はそれを食べない」という意味で通常の否定文となってしまいます。
今回は命令文ですので動詞 “comer” は接続法の “coman” とする必要があります。

もしこの文が肯定命令なら “cómanla” となり、目的語 “la” は動詞の後ろに置き、動詞とくっついて一語となります。

②は「東京へいくな」という意味です。
この場合は目的語がありませんので、先頭に否定語の “No” をつけて、動詞を接続法二人称単数形にすれば完成です。
“No vas a Tokio.” と動詞を直接法とすると「君は東京へは行かない」という通常の否定文となります。
肯定の命令文「東京へ行きなさい」なら “Ve a Tokio.” となります。動詞 “ir” は肯定命令の場合は不規則活用となりますので “Ve” となります。

③は「それを私に送るな」という意味で目的語が直接目的語 “lo” と間接目的語 “me” の2つがあるケースです。
今回は否定命令ですので目的語2つは動詞は前に置きます。そして目的語2つの順番は「間接目的語+直接目的語」となります。これは命令文以外の文と同じ順番です。
仮に「君は私にそれを送らない」という通常の否定文なら “No me lo mandas” となり、動詞は直接法現在形を使います。
また仮に肯定の命令文なら “Mándamelo” となり間接目的語、直接目的語の順番で動詞とくっついて一語となります。

④は「私にそのビデオを送るな」という意味です。
③の文とよく似ていますが異なるのは直接目的語の “lo” が “el video” に代わっていることです。この場合間接目的語 “me” は代名詞ですので動詞の前に置きますが、直接目的語 “el video” は代名詞ではないので動詞の後ろに置きます。
これは命令形以外の通常の文と同じ配列です。
なおこの場合の肯定命令は “Mándame el video” と間接目的語も直接目的語も動詞の後ろにきますが、間接目的語のみが動詞とくっついて一語となります。

否定命令を理解するためのポイントは以下の2つです。

1)①先頭に否定語をつける。②目的語が代名詞の場合は動詞の前に置く ③動詞は接続法現在形とする。この否定命令文の作り方の基本を理解すること
2)通常の否定文や肯定命令との比較して違いを理解すること。

2)再帰動詞の場合

再帰動詞の場合も基本的に考え方は同じです。

例文をいくつか挙げていきます。
①No te preocupes.
②No se los pongan en casa.
③No se pongan los zapatos en casa.

①は動詞 preocupar は「AがBを心配させる」という意味です。再帰形の preocuparse で「Bが心配する」 という意味になります。
例文では「心配しないでね」という意味で否定の命令文となります。
仮に単に主語を二人称単数形に変えると ” No te preocupas ” とありこれは「君は心配しない」という意味の通常の否定文となってしますので、命令文にするためには ” preocupas ” を接続法二人称単数の “preocupes” としなければなりません。
なお、肯定文の命令文の場合は、”Preocúpete ” と動詞は直接法の三人称単数形とし、再帰目的語の te を preocupeの後につけなければなりません。

No te preocupas.
Preocúpame.
No te preocupes.
このようなよく似たような3つのフレーズの違いを比較しながら覚えるといろんなパターンに応用ができるようになります。

なお “No te preocupes” は相手が謝ってきたときに返す言葉として使用頻度が非常に高いフレーズです。文法以前に当然のように使用できるように覚えておいてください。

②は動詞 poner は英語の put に相当します。この場合は “los”(「それを」→例えば靴など)を「履かせる」という意味になります。自分で「履く」という場合は例文のとおり “ponerse” と再帰形にします。
例文の意味は「家ではそれを履かないでね」と複数の人に呼びかけをしていますので否定の命令形とします。
否定の命令形では
・先頭に否定語 ” no ” をつける
・再帰目的語は動詞の前に置く
・接続法の活用をする
の3つで出来上がりますので、この場合は ” No se los pongan en casa. ” となります。
比較のためにこの文を通常の否定文と肯定命令でつくってみます。

通常の否定文

No se los ponen en casa. (家ではあなたたちはそれを履きません)
通常の否定文ですので動詞 “poner” は直接法三人称複数形現在を使い、”ponen” とします。

肯定の命令文

Pónganselos en casa. (家ではあなたたちはそれを履きなさい)
日本ではありえない内容の文ですが、これは肯定命令ですので、動詞 は “pongan” と三人称複数形となり、動詞の前に再帰目的語 “se”と直接目的語 “los” をつけます。

この例文についても否定の命令文とともに通常の否定文・肯定の命令文と比較しながら学習していきましょう。

③は「家では靴を履かないでね」という意味です。
②の直接目的語 “los” を “los zapatos” に代えた場合です。
この場合は直接目的語が代名詞ではないので、間接目的語の “se” は動詞の前に来ますが、直接目的語の “los zapatos” は動詞の後ろにきます。
それ以外は上記の②と同じです。

以上3つの例文を紹介しましたが、先ほども紹介しましたとおりスペイン語の否定命令文の作り方として以下の3つを頭に入れておいてください。

・先頭に否定語 ” no ” をつける
・再帰目的語は代名詞の場合は動詞の前に置く
・接続法の活用をする

この3つです。一見複雑ですが、コツを覚えてしまえば意外と簡単です。
命令形以外の通常の否定文や肯定命令と比較しながらしっかり覚えておいてください。